残業代を請求する方法
1 残業代を請求する方法としては、いくつか考えられます。
会社が特に争わない限りは、会社に直接請求して交渉による解決を目指すという方法が最も簡単かもしれません。特に、在職中に請求するなどその後の会社との関係が継続していくことから円満に解決したいという場合、この方法が向いているでしょう。
また、残業代も賃金であり、未払いは労働基準法違反となります(24条)。特に、残業代のような割増賃金の未払いは、一般の賃金の未払いよりも罰則が重く定められています(同法119条1号、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。そこで、最寄りの労働基準監督署に相談して、会社に指導してもらい、支払ってもらう、という方法もあります。もっとも、残業代の未払いがあることが資料などにより明確に認められないと労基署が指導をしてくれるということはあまり期待できないかもしれません。
2 裁判所を利用する方法もいくつかありますが、代表的な方法としては、労働審判と訴訟です。
労働審判では、労働審判官(裁判官)1名と労働関係の専門家である労働審判員2名で組織する労働審判委員会が審理します。原則3回以内の期日で審理し、まず調停という話合いによる解決を試み、話合いがまとまらない場合には、審理の結果認められた当事者間の権利関係と手続の経過を踏まえ、事案の実情に即した判断(労働審判)を行い、柔軟な解決を図ります。労働審判に不服のある当事者は、異議申立てをすることができます。その場合は、訴訟手続に移行します。
訴訟は請求額に応じて、少額訴訟、簡易裁判、通常訴訟を選択することが可能です。
3 このほかにも、裁判所を利用する方法として、支払督促や民事調停、先取特権に基づく強制執行などもあります。
事案や状況に応じて、メリットやデメリットを踏まえながら、適切な方法を選択する必要があります。ぜひご相談ください。
4 残業代請求の際にはいくつか注意点があります。
まず、残業代を含む賃金の請求には期限(時効)があり、賃金の支払い日から3年とされています。
次に、残業代の未払いについては、未払額と同額の「付加金」を請求することが可能です(労働基準法114条)。訴訟による方法でしか請求することができないという点で実際に支払われる例は必ずしも多くはないですが、訴訟による方法で請求する場合は、検討が必要です。
また、残業代を請求する際、その年3%に相当する遅延損害金を加算して請求することができますが、退職後に請求する際には、利率が年14.6%に上がります(賃金の支払いの確保等に関する法律6条)。
5 以上のとおり、残業代を請求する方法には多数の方法があり、注意点もあります。
それに加えて、就業規則類やタイムカードのような労働時間に関する資料など請求に必要な情報の大半を会社側が保持していることから、証拠となる資料の収集も決して容易ではありません。裁判所を通じてそういった資料を収集することもあります(証拠保全手続き)。
残業代が請求したいがどうしたらよいか分からない、というときはぜひご相談ください。
以上
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